国際コンクールで優勝し、主催者クライバーンから「奇跡のピアニスト」と絶賛された辻井伸行さん。福知山での演奏会スケジュールが入場料1500円で10月に組まれており、切符発売日に徹夜の行列が出来たという写真が、本紙「ケータイでパチリ」欄に載っていた。▼「恋愛するなど人生経験を積んで、深みのある表現力をつけていきたい」と記者会見で屈託なく話した20歳の辻井さんは、両親が彼の才能をいち早く見抜いただけでなく、いかにも愛情を注いで育てたと感じさせるほど、素敵な青年だ。▼優勝直後の会見では「もし目が見えたら、何が一番見たいか」という心ない質問も飛び、春秋子の知人は「無神経を通り越している。彼のピアノはあれほど輝きに満ちているのに」と憤慨していた。文藝春秋8月号に母のいつ子さんが「全盲のピアニストと呼ばないで」という手記を書いているが、非難がましいことは少しも書かれていない。▼「伸行は『僕は全盲のピアニストではなく、ピアニストである僕がたまたま全盲なんだ』といつも言っています。これからはその言葉を自分自身で証明し続けなければなりません」。▼そしていよいよ、「親離れ、子離れが必要な時期」とも。この母にしてこの子あり。伸行君に一日も早く、良き恋人が現れんことを。 (E)