「おくどさん」鎮座の公民館 イベント時”助っ人”に

2022.08.21
たんばの世間遺産地域歴史

現役の”おくどさん”。コロナ禍の今はお休み中=兵庫県丹波市春日町山田で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市春日町山田自治会の公民館です。

緑色の瓦を載せた、レトロな雰囲気を漂わせる公民館。中の炊事場には、今なお現役の”おくどさん”が鎮座している。コロナ禍前は夏祭りなどで、住民がおでんをこしらえたりして活躍していたが、ここ数年は眠りについている。

おくどさんの焚口は4つ。まきをくべ、大鍋でこしらえる豚汁やおでんは味が染みて、イベントの際には欠かせない住民の”助っ人”になっている。

元同自治会長の金川文雄さん(72)によると、住民の間では、どこからか移築してきた公民館と伝わっていたが、館内を整理した際、公民館の建築に関する史料が見つかった。

1923年(大正12)11月付の「物件売渡シ契約証」と記された書類には、かつて幸世村にあった「元氷上農学校南側建物一棟」を「910円」で譲渡すると記載。「幸世村史」によると、この氷上農学校は19年(同8)4月、幸世、成松、沼貫、芦田、船城、葛野、生郷の7村の組合立で開校し、22年(同11)に第1回生33人の卒業生を輩出したものの、入学志願者が少なく同年に閉校したとあり、不要となった農学校の一部が同自治会に売却されたことが分かった。別の史料では、移築が完了したのは24年(同13)10月とあり、100年近く住民の暮らしを見守り続けている。

金川さんは、「歴史を感じる部分は残しつつも、今を生きる人が使いやすいようになれば」と話している。

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