当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、丹波市青垣町佐治地区にある芸能・芸術の神の全国本社「佐地神社」です。
日本神話に登場する女神「天宇受売命(アメノウズメ)」が祭神。天岩戸の前で半裸で踊り、八百万の神を笑わせたことが、天照大御神が閉じた戸を開け、世に光を取り戻すきっかけになったとされる。
芸能や芸術の神ともされる天宇受売命を祭る全国の本社が、同神社。1960年代は「日劇ダンシングチーム」など、芸能を生業とする女性が全国各地から参拝に訪れていた。
天宇受売命を祭る神社は全国にあるものの、結婚相手とされる猿田彦命と一緒に祭られるなど、ほとんどが合祀。佐地神社のように天宇受売命一神を主祭神として祭る神社はまれ。同神社の境内社に猿田彦神社があるが、社が小さく、言われないと気付かない。
同神社で天宇受売命を目にするのは、木版の御神影くらい。31センチ四方の硬い板に、天宇受売命と猿田彦命が向かい合って立つ版木は、武山家が同神社の神職に就いた初代、現在の正詞宮司の曽祖父がこしらえたと伝わるが、詳しいことは分からない。
「御朱印ガール」など、スタンプラリーのように御朱印を集める人の間では知名度が高く、遠方から参拝客が訪れる。武山宮司は「差し出された御朱印帳をパラパラめくると、マニアっぷりが分かる」と笑う。
佐治地区にあるのに神社名が「佐地」なのは、昔、一体が「佐沼」という沼地で、神社の場所は地面だったことに由来する。