2010.10.09
丹波春秋

 きょう10月10日は「目の愛護デー」。目は視覚の器官だが、五感の中で視覚は、赤ん坊の感覚経験の順序で一番遅い。まず触覚があり、それから嗅覚、音を耳にして聴覚、乳房をくわえて味覚。目が見えるようになるのは、ずいぶんしてからだ。▼いわば遅咲きの視覚だが、一説によると、人間の集める情報の80%までは視覚に独占されているらしい。ほかの触覚、嗅覚、聴覚、味覚の4つを合わせても情報の20%しか受け止めていない。それほど目というのは、情報を受信する器官ということだ。▼一方で目は、情報を発信もする。「目は口ほどに物を言う」というように、目は人の気持ちを表現する。気持ちどころか、その人そのものが目に表れもする。「人の精神は目にあり。ゆえに人を観るは目に於(おい)てす」とは、吉田松陰の言葉。目を見れば、その人がどれほどの人物かを見抜けるというわけだ。▼まさに「目は心の窓」だが、その心にも目がある。心眼だ。宮本武蔵は、「観見二つの目をとぐ」ことが武士には必要だと説いた。武蔵にとって、目で見るのが「見」であり、心で見るのが「観」。兵法に通じるためには、朝夕の鍛錬はもとより、心の目である「観」を磨くことだという。▼目をいたわると同時に、心の目にも思いをはせたい「目の愛護デー」だ。(Y)

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