「子どもこそは大人の父ぞ」。イギリスの詩人、ワーズワースの言葉だ。但馬地方で一教師として教育界に大きな足跡を残した東井義雄氏は、校長を務めていた学校の玄関にこの言葉を掲げた。▼東井氏は毎朝、学校に着くと、この言葉を黙読したあと、みずからに言い聞かせた。「子どもから大人が生まれる。子どもから次の日本が生まれる。子どもから新しい世紀が生まれる。その子どもを育てるために、この学校があり私がある」。次代の村や町、日本を担い、創造するのは子どもであるという強い思いが東井氏にはあった。▼しかし、本紙6面の「丹波市各地区の年少人口比率」にあるように、丹波市でも少子化が進行している。次代の担い手の先細りは、丹波市の将来を危うくする。▼「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ」。この三好達治の詩を下敷きにしたと思われる歌を、篠山出身の歌人、小畑庸子さんが作っている。「黙黙と冬の時雨がぬらしゆく太郎の小屋に太郎は居らぬ」。冬の時雨に濡れる寒々とした村。元気な子どもの姿が消えた村は、寒々しさがいっそう募る。▼きょう11日、丹波市長選・市議選が告示される。立候補者たちの少子化策の訴えにも耳を傾けたい。丹波市の将来が寒々としたものにならないように。(Y)