地蔵菩薩

2013.08.24
丹波春秋

 作家・三浦朱門氏の小学校時代の思い出である。夏休みの日記に、「八月一日、子守。八月二日、子守。八月三日、子守…」と書いた友達がいた。夏休み明けの学校で、先生は児童を前に駄目な日記として取り上げ、罰としてその子に読ませたという(曽野綾子氏『人間の基本』)。▼本来は子どもにとって楽しいはずの夏休み。なのに、子守に明け暮れざるを得なかったこの友達はどんな思いで夏休みを過ごしたのか。青年になって戦死したという事実も哀れを誘う。▼夏休み終盤のきのう8月24日は地蔵盆だった。地蔵菩薩は、子どもを守ってくれる仏として親しまれ、古くから賽(さい)の河原にまつわる話が伝わる。親に先立って亡くなった子どもたちが、三途の川の賽の河原で両親やきょうだいを懐かしみ、石の塔を築くが、鬼がやって来て崩してしまう。しかし、地蔵菩薩が鬼をしかりつけ、子どもの苦しみを救うという話だ。▼空也の作と伝わる和讃の一節、「十にも足らぬみどり子が 西院(さい)の河原に集りて 父上恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は この世の声とはこと変わり 悲しさ骨身を通すなり…」が胸にしみる。▼楽しい夏休みの1日となるはずだった花火大会で、痛ましくも命を落とした子どものことを思う。せめて地蔵菩薩に救われんことを願う。(Y)

 

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