過日の弊紙で「秋の七草」の危機を報じたが、くしくも丹波市出身の植物学者、岩槻邦男氏が出された近著『桜がなくなる日』にも同じ話題が載っていた。このなかで岩槻氏は、七草のうちもっとも絶滅が心配されるフジバカマとキキョウを取り上げている。▼キキョウと言えば、キキョウが家紋の明智光秀を思い起こす。江戸時代、光秀の反逆者としてのイメージから武士たちはキュウリを口にするのを避けたと言われる。キュウリの切り口がキキョウに似ているからだ。水戸光圀も、「毒多くして能無し。食べるべからず」とこきおろした。▼キュウリにとっては災難だが、それほど光秀は武士に嫌われたのだろう。しかし現代、光秀を再評価する動きが盛んだ。光秀の株は今、ずいぶん上がった。▼復活した光秀のように、七草の一つ、フジバカマも心ある人達のおかげで以前ほどの危機からは少し脱したらしい。岩槻氏は同著で「絶滅の危機に追いやられた植物が、それを知った人々の配慮によって再び安定した生育状況に戻ることもそんなに難しいことでもない」と書いている。▼とはいえ、我が国の自然はとても楽観できる状況ではない。『桜がなくなる日』とはショッキングなタイトルだが、そんな危惧を話題にしなければならないほどの現状だと岩槻氏は指摘する。耳目を傾けたい。(Y)