全国聾(ろう)学校陸上大会に近畿代表で出場する、姫路聾学校高等部2年の岩見剛君の取材に、春日町栢野の自宅に伺った。剛君は、陸上に取り組んで2年半ほど。短期間での成長に驚くと同時に、剛君に陸上を勧めた両親の思い、願いに心を打たれた。 陸上を勧めたのは、選手としての活躍を期待したからではない。「卒業後は、地元に戻って暮らさなければならない。そうなった時に、陸上を通して、地域に認められる自分の居場所を、自分で作ってほしい」「しんどい事に一生懸命打ち込んで、やり遂げる自信を持ち、つらい事に乗り越える強い心を養ってほしい」との願いからだ。 初マラソンに送り出した時は、「無事ゴールまで戻って来るのか」と心配された剛君、大学卒業まで陸上を続けた父の泰男さんの血を受け継いだのか、心肺能力が高く、成績を伸ばし続けている。 「走ることが好き」になり、自宅近所を走ったり、春日中に練習に出かけたりすることで、顔と名前が広く知られるようになった。「今ではすっかり、記録の方に目がいって」と微笑む両親の姿に、当初の願いがかないつつある喜びを感じ、感動した。(足立智和)