女子大生誘拐事件

2007.01.29
未―コラム記者ノート

 東京・渋谷で発生した、身代金目的の女子大生誘拐事件を報じる新聞記事に違和感を覚えた。被害者は10時間以上も監禁され、容疑者の1人は拳銃を所持していた。救出の際には、発砲で捜査員一人がこめかみに傷を負っている。死者が出る可能性も高い危険な事件だった。 しかし紙面で目立ったのは、母親が高収入の美容外科医であることから、「カリスマ女医」「セレブ」「収入○億円」などの文字。救出後、警察署から出てきた女子大生の顔写真を大きく掲載している記事もあった。言うまでもなく、女子大生は被害者。「こんなにアップで掲載する必要はあるのか」。疑問が募った。 わいせつ目的の男に殺害された、広島市の小学生女児の父親が最近、女児が殺害前に性的暴行を受けた事実を伏せずに報じるよう報道機関に求めた。「事件の悲惨さが伝わらないまま終わったら娘に申し訳ない」という。 詳細を報じなかったのは、メディア側の「配慮」だろう。しかし、この場合は、そのことが被害者の父に無念さを募らせた。事件記事は、多くの人の心情が複雑に絡み合う非常にデリケートなものだ。上滑りした興味本位の報道は、許されない。(古西広祐)

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