宝の山

2007.01.30
未―コラム記者ノート

 ヒノキの間ばつ材を使い、ナメコを栽培している市島町の青木重明さんを取材した際、山中にある畑を見せてもらった。ナメコのホダ木が整然と並ぶ光景はなかなか壮観だったが、同じくらい山中ではやせた木や根こそぎ倒れた木が目立った。青木さんは倒木を指さして、「今、木を切り倒そうとすれば人件費の方が高くつく。儲けにならんから木はほっとかれて山は荒れるばっかりや」と嘆いておられたのが心に残った。 青木さんと同じ思いの人は多く「このままではいけない」と、故郷の山を守るために尽力している人をたびたび取材したが、彼らの情熱的な取り組みを見るたびに、父の「昔は山が無いと、生活できなかった」という言葉を思い出した。 貴重な収入源のスギ、ヒノキ。燃料にする薪や柴、肥料にするための草も山に取りに行っており、ムラの者にとってはまさに「宝の山」だったそうだ。 確かに今、薪や草の肥料は必要ないかもしれないが、利用方法さえ考え出せればただの山も昔と変わらない「宝の山」になる。お土産にもらったキノコをキノコ汁にして美味しくいただきながら、そう思った。(西澤健太郎)

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