「思い込みで記事を書くな」。これは入社した当時から、耳にタコができるほど先輩から言われている言葉である。自分でも気を付けてはいるが、1人で取材に行き始めたころ、どうしても頭から離れなかった思い込みがあった。それは「子どもは消極的で、どこに行っても相手にされないだろう」ということだった。今の子どもは冷めている、と実体を見もしないのに巷に溢れる情報に思いっきり毒されていたのである。 そんな思い込みを、出会う子どもたちはことごとく覆してくれた。「取材に来た」と一言言えば大騒ぎになり、インタビューすればそこにいる皆が一斉に話してくれる。カメラを構えれば瞬時に思い思いのポーズをとる。気付けば一緒になって大笑いしており、同時に自分の浅はかさを痛感するのだった。 「自分の目と耳で確認」という記者の基本を教えてくれたのは、取材先で出会った子どもたちだった。そんな、子どもたちにはとても感謝している。 ただ、出会う子どもが皆22歳の私のことを「おっちゃん」と呼ぶのだけは分からない。「自分はまだ若い」これもまた一つの思い込みなのだろうか。(西澤健太郎)