春は別れと旅立ちの季節。丹波地域の高校が卒業シーズンを迎え、篠山産業高校本校の卒業式に行った。同校にはいろいろな取材で頻繁に行っており、今年の卒業生にも何度も話を聞いていた。名簿には覚えのある名前、会場には記憶に残っている顔がたくさんあった。 粛々(しゅくしゅく)と進められた式で印象に残ったのが、最後の卒業生退場のとき。クラスごとに退場する前に、いくつかのクラスが、正面に並んだ教諭たちに「ありがとうございました」と大きな声で一礼。さらに、くるりときびすを返し、今度は保護者や在校生たちにも同じように礼をした。 その姿を見て、あたたかな気持ちになった。おそらく会場にいた多くの人が同じように感じたのではないだろうか。後で学校に聞くと、昨年も教諭に一礼する姿はあったが、後ろに向き直ってというのは初めてだそう。生徒が自ら考えたことといい、ますますうれしくなった。 そんなさわやかな姿を目の当たりにし、彼らのようにさわやかではなかったものの、自分も何年か前の春のように初々しい気持ちに戻りたい、戻らねば、と思った。(坂本守啓)