「鳥インフルエンザは、養鶏農家だけの問題ではない。同じ丹波地域のまちが発生源となり、ブランドイメージに傷がつき、商業や観光にまで影響が出るのでは」と、ある養鶏農家の心配を聞いた。私たちから見れば、丹波町は山を越えた向こうのまちだが、京阪神の人から見れば、ほとんど同じ地域に感じる人も少なくないだろう。この2カ月の間、兵庫の丹波地域では、特産物を使ったさまざまな催しが開かれた。NPO法人たんばぐみが開いた丹波の地酒に合う「おつまみ選手権」では、料理人や一般市民から多数の応募があった。また篠山の農村女性で組織するグループは「黒大豆料理大集合」を企画。集まった料理25点のレシピ集を作成した。篠山市いずみ会は黒豆ごはんを使い、200人で45メートルの巻き寿司を作った。さらに、黒豆・山の芋料理コンクールを開き、優秀作を集めたレシピ集が配られた。多くの人がこれらのイベントにかかわり、丹波の特産物は、地元の消費者からも支えられ、ブランドとして育てられていると感じた。冒頭の農家の不安も、生産者と消費者が協力すれば薄れていく日も近いだろう。(坂井謙介