「弁論」する98歳

2007.01.29
未―コラム記者ノート

 「すごい」というしかない人に出会った。篠山市内のケアハウスに入所している、98歳の堀井守三さん。先日、施設の文化祭で弁論発表を行った。演台には多少さばを読んで、「百歳の主張」の張り紙。どんな話になるんだろうと、興味津々で出番を待った。 弁論は冒頭からふるっていた。準備されたマイクを手にするや、約百人の聴衆に「わたしはマイクはいりません」と大声で表明。10分以上ある話の間、演台に両手をついて体を支え、一度もいすを使わなかった。ものすごいエネルギーである。 「いま両手を離すと立てない」「匂いも分からない」-。100歳を目前に迎えた自分がいかに年老いているか、弱っているかを述べられた。しかし、言葉とは裏腹に声には張りがある。散々我が身の弱みを話した後に、元気いっぱいの声で「これが百歳の値打ち」と続くのだ。この堂々とした年の取り方、誇り方に感服させられた。 この後に弁論した女子中学生について印象を聞くと、「勉強しはったら女弁士になれる」。さすが明治生まれ、とまた頭が下がった。本当の百歳を迎えた時、その心境の弁論を聞きたい。健康でお暮らしください。(古西広祐)

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