先日、友人と映画を見に行った時のこと。窓口の人に「ここが見やすいですよ」と勧められたので、その座席を指定すると、「あっ、すいません。こちらはもう予約されていました。隣の席で『よろしかったですか』」。ぼーっとしていたので一瞬、「あれ、よろしかったか、よろしくなかったか、どないやったかなぁ」と戸惑ってしまった。 この、「よかったですか」。過去形にすることで丁寧になると思われているようだが、おかしな使い方だ。こちらが何も言っていないのにさも言ったかのように聞き返されているようで、以前から違和感を抱いている。 日本語を勉強する外国人にとって、敬語表現を理解するのはとても難しいというが、それはわれわれ日本人、特に若い世代にも当てはまるよう。敬語だけでない。おかしな言葉や間違った使い方が氾濫している。もちろん、自分の言葉が全て正しいとは思っていないが、文章を扱う仕事をしている以上、常に気を付けていたい。 言葉は変化するものなので、いつかこの使い方が正しくなってしまうかもしれない。でも、やっぱり「よろしかったですか」はよろしくない、と思う。(坂本守啓)