人と自然の共生。この聞き慣れたフレーズに、岩槻邦男氏は「生物学でいうと、寄生も共生のひとつ」と問題提起する。自然をさんざん食い荒らすことも、「自然との共生」と表現できる。人に寄生する回虫のように、人は自然に寄生していないかと反省を促す。 環境問題に対する国民レベルの意識は低いとも指摘する。日々の暮らしの中でどれほど環境に配慮しているか。「共生」という耳ざわりのいい言葉を語るだけで満足してしまい、肝心の行動はおろそかになっていないかと問いかける。 共生を唱えながら、その実、自然に寄生した結果、地球生命系は危険な状態に陥っている。地球生命系とは、食べる―食べられる、分解する―分解してもらうなど、地球上のあらゆる生命がひとつの緊密な輪でつながっていること。人も、地球生命系のひとつの要素。なのに、地球生命系に対してごう慢な振る舞いを重ねてきた。 かつて岩槻氏を取材したとき、氏は「地球生命系が病にかかっていることを知ってしまった者として、警告を発する義務があると考えている」と語っていた。文化功労者に選ばれた岩槻氏。ますますの活躍を期待したい。(荻野祐一)