小さな生きものたちの声

2008.09.08
未―コラム記者ノート

 虫が減った―。このテーマで専門家に取材した。自らの幼少期の体験も話しながら聞き取りをしていると、子ども時代に出会ったあの光景がまざまざと思い出された。 初秋の朝、学校へ向かうため、玄関を勢いよく飛び出したとき、ふと違和感を覚えて振り返った。すると、玄関脇の白壁に無数の大きなガが所狭しと張り付いていた。しかも1種類ではない。赤茶やこげ茶、水色…。「これが一斉に飛び立ったら」。想像するだけで身震いした。昆虫少年だった私も、さすがに腰が引け、ガの集団に気づかれないよう、そっとその場を離れた。そんな出来事が何年か続いた。今でもその白壁は当時のままに残っているが、震えあがった思い出は、記憶の奥底へ沈んでいった。 本当に虫が減った―。減った原因のほんの一部を紙面に書いた(9月4日付)。いずれも我々人間の経済活動が原因だ。 物言わぬ自然界からのメッセージ。小さな生きものたちから送られてくる沈黙の言葉に耳を傾けよう。そろそろ本気にならないといけない。そんな時期に来ている。 (太治庄三)

関連記事