無痛感が妨げに

2008.11.10
未―コラム記者ノート

 北海道羅臼町で開かれた医療シンポジウムに参加した。知床半島にある人口約6200人の町に開業医は1軒もなく、町立診療所が1つあるだけ。今春まで町立病院だったが、医師不足と看護師不足で48床あったベッドを減らし、診療所化(19床)された。入院受け入れは休止している。診療所で診られない患者は、60キロ離れた中標津の病院に通う。そこで診られない重症患者は3時間かけ釧路に運ばれる。 羅臼町では、1・3億円ほどを一般会計から繰り入れて赤字病院の運営を続けてきたが、昨年度は2・3億円に増加、町財政がひっ迫し、補てん継続ができなくなった。公設民営化し、赤字を解消しなければ、入院再開は難しい。住民の命を担う大切な医療機関であっても、赤字で維持できない。羅臼町に限らず、全国の市、町、村立の医療機関を持つ自治体共通の悩みだ。 丹波で医療問題が、公立病院を抱える自治体ほど真剣に論じられないのは、懐に影響がないからだ。「無痛感」が、「切実」と受け止めることから遠ざけている。痛みを感じないまま体をむしばむ病もある。不幸な転帰を、ゆめゆめたどりませんように。(足立智和)

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