丹波の里に狩猟の季節がやってきた。猟師をしている父は、この時期に入るとどこか落ち着きがない。父だけではない。わが家のペット兼猟犬のビーグルたちも、どこでその気配を感じ取っているのか、ふだん聞いたことのないような声で、猟行きをせがむ。従順でかわいらしい愛犬も、この時期だけは、やけに猛々しく、またよそよそしく感じる。幼少の頃、そんな犬と一緒によく父の猟について行った。 山に行くと「これがウサギのはみあと(食べ痕)」「これはシカの通い(けもの道)やなぁ」などと動物の習性や行動を教えてくれた。姿は見えないが、足跡や糞、食べ痕などから、動物の行動を推理する探偵気分が味わえた。 また夕方、猟から帰ってきた父に話しかけるよりも先に、まず軽トラックの荷台をのぞきこんだ。生きもの好きだった私には、ふだん図鑑でしか見ることのできない動物を間近で見て、触れるチャンスだったからだ。キツネやタヌキ、シカなど、どれも死体ではあったが、私にとっては、まさに生きた教材だった。 今でも動物や自然が好きな私。「原点はここにあり」(太治庄三)