夕暮れ時、田んぼのカエルの合唱に交じって、待ちわびていたあの声が聞こえてくる。「ホウッ、ホウッ、ホウッ」。間違いない。今年もあいつが帰ってきた―。 待ち人の名は、アオバズク。体長約30センチ、ハト大のフクロウの一種で、昆虫が主食。日本には青葉の頃に、中国南部や東南アジアから渡ってくるので、この名がついた。 さっそくアオバズクとの出会いを求め、毎年出掛けている篠山市東部へ。巣は農家の白壁の倉にあり、軒下にあけられた通風孔を出入り口としている。すでに繁殖期に入っているので、オスは倉の近くの柿の木に止まって見張り番。メスは倉の天井裏で抱卵中というわけだ。オスに双眼鏡を向けると、黄色いリングのある大きな丸い目を見開いて、出迎えてくれた。 こんな小さな体で、はるばる南方から海を越え、渡ってくる姿を想像すると、相手が鳥だと知りながらも、「お帰りなさい。お疲れさん」という言葉が思わず口をついた。毎年はるか彼方からこの農家の倉に帰ってくるアオバズク。大した目印もないのに、どうして覚えているのか、と不思議で仕方がない。(太治庄三)