命の上に

2009.12.03
未―コラム記者ノート

 「戦時中、わしは少将やったんや」。取材先のおじいさんが思い出話を聞かせてくれる。そして、ぽつり。「君らはもう知らんやろうなあ」。「戦争を知らない子供たちさー」。あの歌が頭に流れた。 そんな私にも戦争につながる人がいる。それは祖母とその弟だ。 弟が自ら志願して軍学校へ入ったこと、曽祖父が隠れてゆで卵を差し入れたこと。そして17歳、ガダルカナル島で亡くなったこと。祖母は彼のいろんなことを話してくれる。 戦争だけでなく、事件や事故があるたび、「記憶の風化」という言葉が課題になる。この間あったことでも、日々の話題に埋もれ、忘れてしまう。 私は確かに戦争を知らない。でも、おじいさんや祖母から聞いたことを伝えていくことはできる。紙面を通し多くの人へ。そして、いつか出会う子や孫へ。 「戦争で散った命の上に私たちの命がある」。当たり前のことでも、絶対に忘れてはならないし、そう考えるのは8月15日以外でもいい。 写真の中でしか見たことがない祖母の弟へ。「ありがとう、あなたのおかげで今があります」 (森田靖久)

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