病の中の希望

2010.03.22
未―コラム記者ノート

 不況、不況、不況―。いつのころからか、この2文字が病のようにまん延しているこのご時世。そんな中でもまちへ取材に出ると、嘆くばかりではなく、「自分たちでなんとかせねば」と行動に出る人たちもいる。 丹波市内でただ1軒残った養豚家、板野宗平さん、桂子さん夫妻(山南町北和田)もそうだ。市場に頼るだけでは採算が合わなくなり、自ら直売所を開設。手づくりした窯で焼き上げる焼き豚も売り出し、東奔西走、新鮮な肉を各地に届けている。 実はお二人には趣味がある。宗平さんは陶芸、桂子さんは茶華道。今は直売所に手いっぱいで、お互いに控えておられるが、なかなかにして文化的なご夫妻なのである。 「自分たちの仕事に誇りがある」「直売所がうまくいったら、また、いつか趣味に励みたい」―。もがきながら、それでもプライドと希望を捨てない姿に、感銘を受けた。 不況の影響は、新聞業界も例外ではない。ただぼーっとしていては、波にのまれてしまう。夫妻が丹精された肉のように、私も、私の記事に精魂を込めようと思った。(森田靖久)

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