「自分が世を去った時に、孫たちに『おじいちゃんはこういう人だった』と伝えたかったんです」。そう照れくさそうな笑顔を浮かべておられた姿が今も目に焼きついている。 昨年12月に取材させていただいた男性が、先日74歳で逝去された。あまりに突然のことで信じられず、今でも元気に過ごされているような気がしてならない。 人生の軌跡や妻への感謝などを盛り込んだエッセー集を自費出版された。冒頭の言葉は、「なぜ出版を決意されたのか」という私の質問に対する答えだった。 幸せでしたか?やり残したことはないですか?―。記者というのは因果な仕事で、叶わないとはわかりながらも、今でも取材の続きのように問いかけてみたくなる。 生きている以上、誰もがいつかはあの世へと旅立つ。人生の怖いところは、それがいつなのかわからないことが多いことだ。私だって明日亡くなる可能性はある。 私も彼のように「証し」を残したい。本を出版できるような筆力はないが、毎日書く記事一つひとつが、誰かの心に残してもらえれば、それが私の「証し」だ。(森田靖久)