市島町にある県営住宅で一人暮らしをされている尾松さんは、脳性まひの障害と日々闘いながら生きておられる60歳の画家である。新年号用の取材で初めてご自宅に伺った。 お会いするのは、今回のアポ取りを含めて5度目。私が一番うれしいことは、尾松さんとすらすらと会話ができるようになったことだ。 声はほとんど出ないので、筆談が中心。手足にもまひがあるので字を書くのにも大きな労力がいるようだ。言いたいこと全てを書き終わる前にこちらが「正解」を言うと、テンポよく会話を進められるのだが、なかなか意図を理解できない場合は筆談の文字が増えていく。 今思えば恥ずかしく、本当に失礼だが、実は、初めてお会いした時、直接取材ができる方とは思わなかった。あまりにも障害が重く見えたからである。 尾松さんが、何年か前の講演原稿で「年配の方からよく幼児言葉で話しかけて頂けますが、年相応な言葉で会話を望んでいます」と書かれていた。相手をよく知らず、勝手に判断すると大事なことを間違える、とドキッとした。(古西 純)