山の主を見た

2011.04.07
未―コラム記者ノート

 ここ最近、わが家の4匹の猟犬(ビーグル)が、夜な夜なよく吠える。先日も深夜の2時ごろ、狂ったように吠えたてるので、「これは近所迷惑になるな」と思い、なだめに懐中電灯を持って外に出た。犬の鳴くその方向に目をやると、田んぼの中に「山の主か」と思うほどの巨漢のイノシシが警戒しながらたたずんでいた。優に1・5メートルを超える体に、盛り上がる筋肉。「フゴーッ」と鳴らす鼻息にすっかり及び腰になってしまったが、そのまま電灯の光を浴びせ続けるとドタドタと駆け出し、林の中に飛び込むようにして姿を消した。が、しばらくは「バキッ」「ドドドッ」と、木の枝が折れる音や地響きが真っ暗な森の中に響いていた。
 昨年の秋、父親とその仲間の猟師7人が、檻(おり)の罠だけで半年間に町内のイノシシを107頭捕獲した。これだけ大量に獲れば、さすがに当分の間、その姿を見ることはないだろうと思っていたが、その直後に、また別のイノシシが姿を現した。その土地の個体が狩られていなくなると、「待ってました」とばかりに、すぐに違う個体がやって来る。まるでイス取りゲームのように。(太治庄三)
 

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