人は用を足すと、ぶるっと震えるが、とある居酒屋のトイレで、私の琴線が激しく震える詩に出会ったので、紹介したい。
『私ね死にたいって思ったことが何度もあったの/でも 詩を作り始めて 多くの人に励まされ/今はもう泣きごとは言わない/九十八歳でも恋はするのよ/夢だってみるの/雲にだって乗りたいわ』
特に「九十八歳」から、「雲にだって乗りたいわ」のくだりが心に突き刺さった。動揺と言ってもいいほどの衝撃、そして、爽快感を覚えた。
自宅に戻ってから作者を調べてみた。名前は柴田トヨさん。なんと明治44年生まれの満100歳。息子に勧められて90歳代になってから始めたという詩だが、詩集「くじけないで」は100万部を超えるミリオンセラーらしい。
自身の無知を恥じるとともに、90歳を過ぎてからの彼女の活躍に心底驚いた。
恋をし、雲に乗りたいと詠んだ98歳。三十路を前に、だらだらと生きている私。この対比はなんだ。負けていられない。私だって雲に乗りたい。
トイレで起きたすばらしい出会いに感謝。みなさんもぜひご一読を。(森田靖久)