4月29日付の本コーナーでも記したが、わが家の目の前の森で、大量のサギが子育ての真っ最中。日を追うごとにヒナがかえるかえる。大合唱も、コーラスだったものが、ヒナのギャギャに、親のグエーという声が折り重なり、もうオペラである。そして、フン。
憎らしくて仕様がなかったが、取材を進めるうちに、サギにも事情があることがわかってきた。開発や各地でサギ追いに遭い、巣作りができる場所がなくなっているのだ。
私、人並みの道徳観は持っております。小学校で習ったその基本。「相手の立場に立って考えよう」。
サギからすれば、土地を奪われるわ、ようやく見つけた場所では人から疎まれるわ。心では、「すんまへんなぁ、でも仕方ありまへんのや」と思っているかもしれない。
とは言え、もちろん私は人であるし、一被害者として完全に思いやることはできない。サギは保護法で守られ、巣立った後、来年に向けた対策も見えない。付き合っていくしかないのだが、それを受け入れるのもいかんともしがたい。
とかく自然との共生は難しい。おかげでそのことだけははっきりわかった。(森田靖久)