丹波市出身で、福島県いわき市で飲食店と小売店を営む新谷尚美さんを1年3カ月ぶりに訪ねた。新谷さんの店は繁盛していて、ホッとした。水産、農産加工品を購入し、自宅へ送った。完熟ユズとイチジクの商品は極上の味。
店が面している南相馬市、仙台市へと続く大動脈、国道6号を1人、車で北上した。広野町、楢葉町と通り、その北の富岡町との町境で止められた。前回より8キロ北に進めた。昨年8月まで警戒区域だった楢葉町。開いている店はなかった。田んぼという田んぼに、汚染された草などを詰めた黒い袋が10個程度ずつ置かれていた。仮置き場には、膨大な数の袋がうず高く積まれていて、異様な光景だった。これをどう処分するのだろう。
新谷さんの店から車で10分ほど北のいわき市北東端の久之浜地区。津波で全半壊していた家々が解体され、基礎だけを残し、広い地面と青い空が広がっていた。周囲に建物がなくなり、すっかり見通しが良くなったほこらに、前回も見た白いのぼりがあった。「ここに故郷あり」と書かれたのぼりは、海風を一杯に受け、はためいていた。(足立智和)