「納涼浮世絵展」

2013.07.27
未―コラム記者ノート

 丹波市氷上町の植野記念美術館で、「夏の粋 納涼浮世絵展」が催されている。江戸情緒たっぷりの夕涼み、花火、夕立など、夏の風情が感じられる風景画や美人画を紹介しているほか、幽霊や妖怪を描いたものもあり、喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重ら、江戸時代を代表する絵師たちの浮世絵約120点を展示している。水木しげるファンの私。幽霊・妖怪画に食指が動き、観覧に出掛けることにした。
 巨大ガイコツや化け猫、鵺(ぬえ)など魑魅魍魎(ちみもうりょう)を描いた浮世絵の数々が展示されており、心が躍った。なかでも歌川芳虎の「狐の嫁入り」を題材にした作品「時参不計狐嫁入之図」が印象的だった。暗闇の中を火の玉に導かれながら、狐の嫁入り行列が延々と続く。その光景を若い女が木陰からのぞき込むという構図だ。
 小学生の時に祖母から、日が照っているのに雨が降る現象を「狐の嫁入り」だと教わった。以来、日照り雨に遭遇するたびに、白無垢姿のキツネを想像し、不思議な気分に浸ったものだった。そんな在りし日の祖母とのやり取りを思い出しながら、しばらくこの絵と向き合った。(太治庄三)

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