アニメ監督の宮崎駿さんが映画製作の第一線から退くと、引退を表明された。
宮崎監督の長編アニメとの最初の出会いは「となりのトトロ」。公開された1988年から遅れること3、4年後のことだった。「アニメ映画なんぞ、子どもが観るもの」と偏見を持っていたため、わざと見ないようにしていた。しかし20歳のころから自然環境に関心を抱くようになり、その世界の知人から紹介されて鑑賞。見終ったあと、これまでに味わったことのない心地良い感覚が余韻として残り、宮崎作品にすっかり魅了されてしまった。
なかでも一番のお気に入りは「もののけ姫」。97年に公開されるなり、友人と映画館へ。その後も立て続けに3度、劇場に足を運んだ。ちょうどこの頃、人生に迷い苦しんでいた時期で、映画の主人公が、結局どうすればよいのか分からないまま、それでも目の前の問題解決に向け、懸命に行動し続ける姿が自分と重なり、自分の支えにもなった。
そんな青春時代を共に歩んだ宮崎作品が、もう新たに生み出されることがないと思うと、ただただ残念で仕方がない。(太治庄三)