丹波地域から出発したボランティアバスに乗り、1日まで東北・福島の仮設住宅を訪れた。そこに住んでいるのは、東日本大震災、そして、福島原発事故による放射能汚染のため、住みなれた土地を離れ、いつ帰れるかもしれない人たちだった。
いくつか訪れた仮設住宅の中で、私の記憶を呼び起こす名があった。福島県双葉郡双葉町。実家の京都府船井郡京丹波町と姉妹都市のまち。
小学生のころ、町の交流事業で双葉町を訪れたことがある。もう20年近く前のことだが、現地の児童と遊んだこと、海で泳いだことを思い出した。
その時、双葉の大人の方がこう言っておられた。「うちには原発があるんだよ。東京の電気を支えているのはこのまちなんだ。すごいだろう」
かつて福島原発は双葉にとって「誇り」だったのかもしれない。信じていたものに裏切られた人々が、どれほど複雑な思いを抱いているのか。どんなに頭を振り回しても、完全に同じ気持ちにはなれないことが悲しい。
あの時、泳いだ海は本当にきれいな海だった。それだけは確かだった。(森田靖久)