初めて絵本を買った。魚類学者でタレントのさかなクンの著書「さかなのなみだ」(二見書房)という絵本だ。中学生のときに所属していた吹奏楽部での「いじめ」を題材にした作品で、2006年、「いじめられている君へ」と題して朝日新聞に掲載された文章を絵本にしたものだ。
「さかなの世界にもいじめがある。小さな学校のなかにも。せまい社会のなかにも」で始まる絵本。さかなクンが飼っていたメジナは、海では群れをつくって泳いでいたのに、水槽の中に入れると、1匹を仲間はずれにして攻撃し始めたという。標的にされたメジナを別の水槽に移すと、今度は別のメジナが攻撃対象になる。これが繰り返された。「広い海のなかなら、こんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです」とつづっている。
さかなクンは続ける。「広い空の下、広い海へ出てみましょう」。いじめる側、いじめられる側。どちらも狭い世界で物事を考えるのではなく、広い視野を持ちたい。そう感じる絵本だった。いじめにまつわる事件記事を掲載することがないことを願う。(田畑知也)