18歳から45年間働き続けた父がこの3月末で退職することになり、ささやかながら祝いの宴を開いた。父、母、2組の姉夫婦。その子どもたちも合わせて総勢10人が父の労をねぎらった。
大好きなビールのジョッキを手にした父が、一族を前に一言。「45年を振り返ると、1人が2人になり、それがこれだけの人数になったのかなぁと感慨を覚えています」
ついでに、「これから、また1人、また1人と増えていくこともあるかもしれません」。そこで姉が突っ込む。「もう増えへんかもしれんで」。これは私に対する嫌味である。
仕事人間で、正直、たくさん遊んでもらったという記憶はない。それでも今、こうして父を嫌いになっていないのは、それなりに認めているからなのだろうと思う。
私自身も社会人になり、この先もずっと働くことを考えると気持ちが萎える。それをやってのけ、家族に衣食住をもたらした父に感謝。いろいろと面倒も見てきたが。
とにもかくにも、親父、お疲れ様でした。それから、母がいなければ45年働くことも家族もいなかったことを忘れないように。(森田靖久)