実家の魔力

2014.11.27
未―コラム記者ノート

 しばらく実家に身を寄せている。3日以上、実家で生活するのは14年ぶりだ。
 父と母との生活は恐ろしい。
 朝昼晩と必ず母が出してくれる食事。毎夜、晩酌する父の姿を見ていると、どうしてもつられて飲んでしまう。一人暮らしの時よりも健康的であり、非健康的な生活。
 夜は三人でテレビを見ながら過ごす。お宝鑑定、サスペンス、報道番組―。一通り見てしまうと、「寝よか」。そうして、一日が終わる。やらなければならない仕事があるのに、なぜか、手につかない。
 なんてことのない普通の生活だけれど、言いようのない魔力がある。まるでこたつに入っているような気分になる。
 この心地よさが、両親がつくりあげた家族の時間なのだろうな、と真面目なことを考えてみるが、気恥ずかしいので本人たちには言えない。
 食後はぐだぐだと会話もする。最近の話題は、衆院選。「えらいこっちゃな」「ほんま忙しい時期に勘弁してほしいわ」。報道人としてあるまじき言葉を吐く自分に気付く。
 仕事も忘れる時間。そろそろ抜け出さないとまずい。(森田靖久)
 

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