事の始まりが少し恐ろしい年中行事を取材した。篠山市今田町上立杭の「不動尊護摩焚き供養」。およそ80年前の昭和6年から始まった行事だ。
大正初期と昭和初期の2度、同集落をはじめとするそこら一帯で、伝染病が大流行し、多くの子どもの命が奪われたという。村人たちは伝染病流行の原因を「ぞんざいな扱いに怒っている不動尊によって引き起こされたのではないだろうか」と考えた。そこでその昔、不動尊を祭っていたとされる集落のご神木の根元を探ってみると、土の中から不動明王の石像が見つかった。村人たちは「これは大変」と、再び丁重に祭り、以後毎年、不動尊の初縁日にあたる1月28日には、盛大に護摩を焚き上げて供養するようになったという話。
多くの住民が集い、世間話に花を咲かせる交流の場にもなっているこの行事の陰に、このような物語があったとは、驚きだった。
取材の最後に、不動明王の石像を撮影しようと、ほこらに掛けられた幕をまくり上げたそのとき、石像と目が合った。話を聞いた後だっただけに、背筋がゾクッとした。(太治庄三)