ツバメほど人に愛されている野鳥はいないだろう。軒下が糞まみれになるにもかかわらず、多くの人は子育てをやさしく見守っている。
我が家では毎年、2度繁殖し、合わせて10羽ほどが巣立つ。7月上旬までには子育てを完了させるが、数日前、お邪魔した陶芸家のお宅では、親鳥ほどに育っていながらも、いまだ甘えた声で餌をせがむ2羽のひながいた。
営巣場所は工房の天井の梁で、人との距離は1メートルもない。自由に出入りができるようにと、窓ガラスの一部をカットして隙間を作ってやるほどのかわいがりようだった。
本来、人間のそばというのは野生動物にとっては居心地が悪いはずだ。しかしその反面、カラスやヘビなどの天敵は近づきにくいし、雨風もしのげる。弱いツバメは人をボディガードにして繁殖するという、見事な発想の転換で今日の繁栄を勝ち取っている。
厳しさを増す新聞業界。我々にもツバメのようなウルトラCの秘策はないものだろうかと、つぶらな瞳でこちらを見下ろす2羽に「なあ、おい」と心の中で投げかけてみた。(太治庄三)