教えない講師

2017.11.23
未―コラム記者ノート

 丹波立杭焼伝統工芸士の大上巧さんが、西紀北小学校を訪れ、児童たちに作陶体験をする時間を提供した。ろくろを使った実演に子どもたちの目が輝く。土の塊を触る手の間から、にゅるにゅるとお碗や徳利が顔を出す手品でも見ているような表情だ。

 いよいよ子どもたちの作陶体験。まずは作り方を説明して…と思いきや、大上さんは、何もしない。児童たちは、作陶体験というより“粘土細工”のように自由自在に土で遊び始める。児童がへらを手に「どうやって使うん?」と聞いても「自分で考えてみぃ」と答える。

 自分が手本を作ってみせると、それと同じようなものを作ってしまうのが嫌なのだという。円形のろくろでさえ、形につられて丸いものを作ってしまうからと、四角の粘土板をセットにして渡している。「子どもたちには、我々には想像もできない発想がある。そこを伸ばしてやれたら」と目を輝かせる。

 丹波焼といえば、その歴史や伝統をイメージすることが多かったが、常に新しいものに刺激を受けようとする原点を感じるひとコマだった。(芦田安生)

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