年末、実家に帰省すると中学生の甥が遊びに来ていた。私を見て「よっ」と片手を上げた目線の高さがほとんど変わらない。
こちらも手を上げてあいさつしながら、もうすぐ追い抜かれるのではないかと危機感を覚えた。
寝っ転がった太ももは太く、野球で鍛えた立派な尻をこちらに向けている。ぎょろりとした目に短い髪が良く似合う“小僧さん”だったのに。身近な子どもの成長に、時間の波が私にも押し寄せていることを感じさせられた。
成長は体だけではない。冗談で「彼女できたか」と問うと、真顔で「クラスに好みの女子がおらん」と偉そうに言い放つ。「タイプは」と聞くと、「髪の長い人。肩甲骨がボーダーライン」と答え、聞いたこともないアイドルグループのメンバーを上げる。なかなかマセてきた。
大みそかの夜、連れ立って村の神社へ向かった。空がうっすらと明るかった。甥が得意げに言う。「知っとるか。霧が出てるから明るいんや」
年が変わって初笑い。甥よ。霧は光らんのだ。かわいいというか心配になる。空に月が浮かび、やわらかい光を落としていた。(森田靖久)