バスの車窓から景色を眺めていた。とうに立春は過ぎたというものの、農村の風景は緑が乏しく寒々しい。それでも必ず春は訪れ、野辺では草花がにぎわい出すだろう。「春が待ち遠しいなぁ」と感傷的になりながらバスに揺られていた。ここは篠山市。
観光バスではない。3月4日に行われた「篠山ABCマラソン大会」で、完走できなかったランナーを収容するバスだ。初めて出場したものの、大会前から思わしくなかった右ひざが途中で悲鳴を上げ、22キロ地点で断念。あえなく車上の人となった。センチメンタルな気分にならざるを得ない。
収容バスでスタート地点近くまで戻ると、早くもゴールした人が、完走者のみに与えられる丹波焼のメダルを首から下げ帰路につこうとしていた。ただ指をくわえて見送ることしかできなかった。ともに出場した先輩の芦田記者は、36・3キロ関門に引っ掛かってレースを終えた。先輩は「丹波焼メダルがまぶしい」と言い、2人で慰め合った。
ゴールにはたどり着けなかったが、沿道の声援が背中を押してくれました。ありがとうございます。いつか必ず完走します。(田畑知也)