きっかけ

2018.09.30
未―コラム記者ノート

 小説「破戒」を読んでいる。言わずと知れた島崎藤村の名作で、「部落差別」を題材にとったもの。主人公・瀬川丑松のモデルになったとされるのが、旧制柏原中学校2代目校長の大江礒吉だ。

 氷上育英会が発行した「丹波人物伝」を読み返す機会があり、大江について書かれた章を読んでいると、目を引く個所があった。大江が同校長に就任したのは33歳とあり、今の自分と同じ年齢だったからだ。単純な理由だが、何となく身近に感じた。

 大江は、生徒の自主性を重んじた教育を展開。上級生による下級生への「鉄拳制裁」も禁じたという。当時の大江に、ある生徒が「ナマズ」とあだ名をつけた。のちの総理大臣・芦田均だ。エピソードがつながっていく。

 長野県出身の大江のように丹波に足跡を残した人を含め、地域の先人について知ることは楽しい。先日も調べ物をしていたとき、柏原町出身の郷土史家・松井拳堂の著「丹波人物志」に行き着いた。これもそそられた。

 興味を持つ「きっかけ」を、学ぶ「きっかけ」につなげたいと思った。
(田畑知也)

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