老いと感動

2019.02.24
丹波春秋未―コラム

 「努めない人の気持ちには三つある」と、吉田松陰はいう。「自分は馬鹿だから」「自分は才能が高く、もう学問を極めたから」。そして三つ目が「年をとったから」。

 人は老いれば、どうしても肉体の機能は衰える。それは仕方のないこと。しかし、精神までも衰えるのだろうか。脳科学者の茂木健一郎氏によると、「もう年だから、若い頃のように頭が働かない」というのは詭弁であり、単に努力をしていないだけという。人の脳はいつまで経っても完成を迎えることのない、青天井の構造をしているからだ。

 人の寿命には限界があるが、脳は何百年でも変化し続ける。そんな脳をいつまでもフルに発動させるには、感動を味わうことだそうだ。感動があればあるほど、自分の脳を変えられ、人生を変えることができる。

 手元に「ぬくもり」と題した冊子がある。丹波の森公苑で開かれている丹波OB大学の自治会が発行したもので、近く修了式を迎える4年生らの原稿が収められている。

 人との出会いと交流、知識との出会い、新しい体験など、4年間の思い出がつづられている。第二の人生での学び舎には感動があったに違いない。「感動することをやめた人は、生きていないのと同じことである」とはアインシュタインの言葉。感動のある老後を送りたいものだ。(Y)

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