女性的精神

2019.03.10
丹波春秋未―コラム

 一千年前に書かれた清少納言の「枕草子」にほれこみ、映画を作ったイギリス人の映画監督がいたことを、先ごろ亡くなった橋本治氏の著書で知った。新鮮な驚きが映画を作った動機らしい。「今から一千年前といえば、我がイギリスはほとんど“野蛮人の国”と同様だった時代。そんな時代に、どうしてこれだけ自由に文章を書ける女性がいたのか」と、その監督は語ったという。

 ヨーロッパに「文章を書く女性」を求めることは酷だった時代に、日本には自由に奔放に文章を書く女性がいた。その一例を取り上げ、橋本氏は「高度に進んだ文化が日本にあった」と書いている。

 日本の文化は、もともと女性的性格を有していたとの指摘がある。虫の声にも“もののあわれ”を感じるきめ細やかな情感、抑制された美意識などを指してのものだ。「枕草子」も女性的な精神文化の系譜の中で生まれたのかもしれない。

 「枕草子」の中に清少納言が「かわいい」と感じるものを書き並べた段があり、その一つに「雛の調度」を挙げている。お雛様遊びの道具のことだ。

 雛祭りをめぐるイベントが16日から篠山市で、21日から柏原町で始まる。古い時代の雛人形や吊るし雛が飾られるなど、町をあでやかに彩る。日本文化の基層にある女性的精神にふれる好機でもある。(Y)

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