政治と投票

2019.07.21
丹波春秋未―コラム

 日本人はサービスに対する要求がとりわけ高いと、哲学者の中島義道氏はいう。「この国では、人々は客になったとたん、ふんぞり返り、自分にかしずくばかりのサービスを相手に要求する」。うなずける指摘だ。

 モンスターペアレントもその一つの典型だろう。「部活で、うちの子をレギュラーにしてほしい」などと、学校に理不尽な要求をする親は今日珍しくないという。

 モンスターペアレントが出現した背景には、識者が指摘するように学校教育がサービス業と化してしまったことがある。このため、まるで客のようにふんぞり返る親が誕生した。

 教育に限らず各分野でサービス業化が進んでいるが、もし政治も、客である国民へのサービス業と受け止められれば、どうなるか。「政治には期待できない。投票しても何も変わらない」と考え、国からのサービスに見切りをつけた人の中には、投票所に出向かない人が出てこよう。

 サービスが悪いと判断した店に人は足を運ばない。一般的なサービス業と客の関係ならば問題ではないが、政治はどうか。社会学者の白井聡氏が指摘するように「誰かは必ず当選し、選ばれた人たちの中から政権が成立する」。そして、その影響から誰しも逃れられないのである。投票に行くのは客ではなく、主権者としての行動である。(Y)

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