花火

2019.08.18
丹波春秋未―コラム

 江戸時代末期、火薬を用いて鉱物資源を採掘することを教えるために日本にやって来たアメリカの技術者が不思議がったという。火薬の使い方を知っている日本人が、なぜ採掘に火薬を応用してこなかったのか。その理由がわからないというのだ(『人生に悩んだら日本史に聞こう』)。

 考えられる最大の理由は、日本人にとっては自然こそが神であり、神である山に発破を仕掛けるのは言語道断と考えたということだ。西洋の自然観は違う。西洋では、自然は神に対立するものとして考えられ、自然は人間が支配し征服するものだったとされている。

 人間より神を上位に置き、人間より下位に自然を置いた西洋。このため、ダーウィンが、人間はサルから進化したという進化論を唱えると非難を浴びた。日本は違った。明治の初め、進化論の学者が来日したとき、その学者は日本人が進化論をすぐに受け入れたことに驚いたという。

 神や人間、自然が融合的に混在している日本では、動物と人間は親しい関係にあり、人間の先祖はサルと言われても抵抗することはなかったらしい。これも日本人の自然観に基づくものだ。

 今週末の24日の夜、氷上町の愛宕祭で名物の花火大会が催される。昔々の日本人は、資源の採掘に使わなかった火薬を平和的に利用した。花火である。(Y)

関連記事