約100人”幻の大会”駆ける コロナでマラソン中止 手厚い対応に感謝の声も

2020.03.05
ニュース丹波市地域

自分たちで「よーい、どん」と”号砲”を鳴らし、マラソンを楽しむランナー=2020年3月1日午前9時24分、兵庫県丹波篠山市北新町で

新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、中止となった兵庫県丹波篠山市の「第40回丹波篠山ABCマラソン」(実行委など主催)―。開催予定だった1日、参加を予定していたランナーの一部が本番と同じ、篠山城跡を発着点にしたフルマラソン42・195キロなどを楽しんだ。交通規制がかかっていないため、ランナーたちは車や信号などに注意しながらラン。開催数にカウントされない”幻の大会”を満喫し、「来年こそは」と先を見据えた。

篠山城跡には早朝からランナーがぽつりぽつりと集まり始め、昼頃までには約100人がスタートを切った。中にはゼッケンを着けたり、この日のために用意していた被り物をして、本番と同じスタイルで走る姿も見られた。

大阪市から訪れた40歳代の夫婦は前回大会のTシャツを着て来場。「やっぱり走りたいと思って。ほかにも同じ思いで来ている人がいて、不思議な仲間意識が生まれました」とほほ笑み、別グループと城跡の石垣をバックに記念写真を撮り合った。

同大会は関西では老舗のフルマラソンで、田園風景と住民らによるもてなしが毎年、好評を博している。今年は、北は北海道、南は沖縄県まで43都道府県から1万720人のエントリーがあった。

実行委ではマスクを準備するなど普段以上に感染症予防に注力したり、公式サイトで注意を呼びかけるなど、さまざまな対策を取りながら開催に向けて準備を進めていたが、2月20日、阪神・淡路大震災が発生した1995年以来の中止を決めた。

参加料は返金しないが、代わりに今大会に申し込みがあったランナーを来年の大会に優先的に申し込める機会を設け、2000円割り引くことで、実質的に今大会の一部返金とする。また、完走証の発行料金(300円)も次回大会で全額免除にする。参加記念品のTシャツや大会プログラムは順次、送付している。

こうした対応はランナーから好評を得ており、1日に神戸市から訪れた40歳代男性は、「とても手厚い。むしろランナーはリスクを承知で参加しているので、『そこまでしていただかなくても』という思い。運営スタッフや市のみなさんに感謝」と言い、「昨年、初めて参加し、走りやすさや沿道の応援、しし汁の振る舞いなど、とても楽しかった。今回の対応で、ますますABCマラソンの評価が上がった」と話していた。

丹波篠山市出身で、京都市から仲間と訪れた50歳代男性は、「楽しみにしていたので残念だが、中止はしかたないこと。来年を楽しみにしている」と話していた。

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