「全市民に5万円給付」掲げ市長当選 支持理由トップは「ごみ袋半額化」 出口調査で明らかに

2020.11.22
ニュース丹波市地域地域選挙

丹波市長選で初当選した林氏=2020年11月15日午後10時15分、兵庫県丹波市春日町黒井で

兵庫県丹波市で11月15日に投開票された同市長選挙で、丹波新聞社は期日前投票に訪れた有権者に「一票を投じた理由」を聞いた。「新型コロナウイルス対策として全市民に5万円を給付する」などを公約として掲げ当選した林時彦氏(66)への一番の支持理由は、同県下でも高いとされる「ごみ袋を半額に」で、林氏に投じた人の半数超が支持した。落選した現職・谷口進一氏(67)は「子育て支援」公約が支持理由で最多だったが、上位に「他候補より良い」「人柄」と政策以外の評価が入った。林氏の公約が、有権者の心を広くつかんだことが浮き彫りになった。

出口調査は12―14日に、市内6カ所で実施。有権者数と前回選挙の投票率から6地域で調査票数を案分。430人の有効回答を得た。支持理由の選択肢は、谷口氏13、林氏ともう1人の候補者の岩崎政義氏(65)は12示し、最大で3つまで選んでもらった。

投票者に聞いた林氏を支持した理由

調査結果によると、林氏の訴えの中で「ごみ袋」が最も支持を集め、次いで「統合市庁舎建設に反対」。「5万円給付」は3番目だった。谷口氏が最も支持を集めた「子育て支援」より、林氏の「ごみ袋」「庁舎反対」「5万円」の方がより強く支持された。

支持理由を最大3つまで選べる中で、1項目のみを選んだ人が、谷口氏支持者で約半数あったが、林氏に投じた人では25%と、林氏を支持した人は、複数の理由で選んだ人が多かった。

支持理由1つで林氏に投じた人の投票理由は、多い順に、「庁舎反対」「他候補より良い」が同率1位で、次が「付き合い」、「5万円」は4番目。「5万円」のみを支持理由に挙げた人は、林氏支持者全体のうち、3%だった。2つの理由で支持した人のうち、理由の1つを「5万円」にしたのは、林氏支持者全体の7%だった。

「庁舎反対」は男性の支持が有意に多かったが、「ごみ袋」「5万円」「デマンドタクシーの病院直行便運行」に有意な男女差はなかった。

年代別の林氏支持の理由

年代によって支持政策に強弱があり、20代と40代の支持理由の1位が「5万円」、30代でも2位だった。20代は4人に3人が「5万円」を支持する一方、30代で5割となり、40―60代は4割、70―80代は3割弱と、有権者数が多く、投票率が高い中年高齢層は、若年層に比べ「5万円」支持率が低かった。「デマンド」は高齢層で支持された。

「庁舎反対」の支持率は、50代までは3、4割と低く、60代は半数超が支持した。「ごみ袋」は、全世代で4―7割支持された。「第三子に100万円の出産祝い金」は、20代と30代で4番目に入った。

市民の声さまざま「5万円いらない」「地域を元気にして」

新しい丹波市長の誕生を市民はどう受け止めているのか。声を拾った。

70歳代主婦は「コロナで逆境の時に、丹波市の良さを生かすことを考えてほしい。旧町意識を払しょくし、一つにまとめる努力も。私たちは2025年問題の当事者。健康づくりに取り組んでいくので、応援をお願いしたい」と話す。不祥事が多かった市職員の奮起を期待する声もあり、50歳代主婦は「窓口の職員に元気がなく、モチベーションが下がっているように感じる。市職員が元気になってこそ、市民も元気になり、住みよい丹波市につながる。『子どもに帰って来いと言えるまち』はとても大切なことだが、少子化対策にも取り組んでほしい」と語った。

40歳代農業女性は、市を挙げた活性化を期待し、「公務員目線ではなく、住民目線で、市民が住みやすくなるようなお金の使い方をしてほしい。予防接種の補助拡大や、ごみ袋代、水道料金の引き下げなどを期待したい。市のビジョンでは中心部とする地域を示していたが、端の方の地域を切り捨てる路線で本当にいいのか。全地域が元気な丹波市にしてほしい」と話す。

林氏が公約に掲げた「全市民に5万円給付」に言及した30歳代会社員男性は、「『見える化』を図り、市の課題や取り組みの進捗を知らせ、市政を身近に感じさせて。5万円は、無理に押し通して財政が苦しくなるのなら給付しなくてもいい。それよりも市政の停滞感を払しょくし、整えてほしい」、40歳代会社員男性は「5万円給付はありがたいが、コロナ禍で税収減が予想され、税の使い道も平時より多岐にわたって支出が増えそうな状況なのに、何十億円も使って大丈夫なのか。他の行政サービスが低下しないか心配だ」と言い、実現性に疑問を投げかけた。

60歳代自営業男性は、「ぬるぬるした行政に波紋が起きた。林さんにかき回してほしい。職員を教育して信じて仕事を任す。議員時代と真逆の立場になったことを自覚し、4年後に『ええ市長や』と言われるように。庁舎は要らない。5万円も配ってもらわなくてもいい。有事に備え、貯金は持っていて」と語り、トップ交代による市政の停滞感の払しょくを期待している。

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