「地区水泳」の理想形試行 校区内施設のプール活用 監視当番なく、費用はPTOが後払い

2023.08.10
地域注目

校区にある施設「ユニトピアささやま」でのプールを楽しんだ岡野小学校の児童たち=兵庫県丹波篠山市矢代で

兵庫県丹波篠山市内各小学校PTA主催の夏休みの「地区水泳」が今夏、自校のプールで実施する学校は14校中1校のみとなった。同市教育委員会によると、高温になる日が多く、児童たちも監視する保護者も熱中症の危険性が高まっていることや、監視当番が大きな負担になっていたこと、水難事故のリスクがあることなどが理由で、今後も実施は難しいとみられる。そんな中、岡野小は校区内にある多目的施設「ユニトピアささやま」に協力を依頼。今年初めて、7月21日―今月6日、同施設のプールを地区水泳に活用した。児童たちはプールを楽しみ、保護者は負担が少ないという“理想形”を試行している。

学校現場でも長くプールを実施しない理由の一つだったコロナ禍。感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下げられてから最初の夏休みだが、地区水泳はほぼ姿を消している。実施した1校も、期間を短縮したほか、週3日、1日1時間のみにした。

そんな中、今春から組織改革を行っている岡野小・幼稚園の「PTO」は、事前に行ったアンケートで、児童の約6割が「夏休みのプールを楽しみたい」と答えたことを受け、同施設の利用を発案。児童たちは施設の受付で、事前に配布されたカードを提示し、名簿に名前を書くだけ。入場料やプール使用料は後日、PTOが支払う仕組み(付き添いの保護者は有料)。

同施設専属の監視員が配置されているため、保護者の監視当番は必要ない。また、学校で地区水泳を実施した場合、夏休み中のプールの消毒に使う塩素代が5、6万円かかっており、その費用を使用料に回すことができる。同施設側も地域への貢献のほか、一般利用客もいるプールのにぎわいの創出、使用料が得られるなどのメリットがある。

保護者らは、「子どもたちは楽しいし、保護者は当番がなくて助かる。ユニトピアが受け入れてくださって、本当にありがたい」と感謝する。

PTO会長の上本浩之さん(44)は、「従来の形での地区水泳はできなくて当たり前で、岡野は校区にユニトピアがあったからこそできる。来年も継続してお願いできればうれしい」と話す。

改革の一つとして、保護者の加入、非加入を選択できるようにしたほか、地域の賛助会員も創設。副会長の山下浩司さん(42)は、「小学生がいない地区からも賛助会費を頂くなど、子どもたちがやりたいことをかなえる力になっている」と感謝し、「個人的な考えだが、親だけが子どもたちのことを考えるのではなく、地域や出身の人も含めて一緒に子どもたちのために活動してもらえることが理想。そんな輪を広げていき、これからもここで夏のプールを続けさせてもらいたい」と笑顔で話していた。

同施設の前岡輝昌さんは、「校区内の企業として、地域ではできないことを担い、協力させていただければと考えた。収益にもつながるため、お互いに“ウィンウィン”です」と話している。

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