蜘蛛退治伝説残る 境内の岩壁に洞窟

2023.12.13
たんばの世間遺産地域歴史

社殿の背後にむき出しの岩肌が迫る八幡神社=兵庫県丹波篠山市市野々で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、蜘蛛(くも)退治の伝説が残る兵庫県丹波篠山市市野々の八幡神社です。

丹波篠山市の市野々、奥山の2集落の氏神で、正徳元年(1711)建立の八幡神社(市野々)。社殿の背後にはむき出しになった岩肌が迫り、特異な景観をつくり出している。その岩壁の足元に小さな口を開けた洞窟がある。この洞窟には「蜘蛛退治」の伝説があり、諸説ある大芋(おくも)の地名の由来の一つにもなっている。

「篠山町百年史」に書かれている記述を要約すると、「遠い昔、ここに大きな土蜘蛛がすんでいて、毎日、里の人々を苦しめるので、薬師如来が退治したというのである。土蜘蛛は追われ追われて同市味間村を経て丹波市山南町阿草まで逃げてきた時、矢で足を一本射落とされて動けなくなった」―。

「蜘蛛退治」伝説が残る洞窟の内部

洞窟の入り口は、幅約3・5メートル、高さは1メートルもないが、洞窟内部は幅約5メートル、奥行き約6メートル、最も高い所は3メートルほどもあり、立って歩けるほどに広い。「多紀郷土史考」によると、周囲にかつて鉱山があったことから試掘跡ではないかとする。

市野々の男性(83)は、「子どもの頃は土蜘蛛伝説なんて知らず、洞窟は遊び場だった。境内では野球をし、秋祭りには青年団が音頭を取って歌えや踊れやの催しが行われるなど、そりゃにぎやかだった」と懐かしむ。今でも宮当人による毎月の掃除をはじめ、正月には村人みんなで一年の安寧を祈り、秋には例祭を営むなど大切に祭っている。

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