節分に恵方(えほう)を向いて太巻き寿司を丸かぶりすると1年間を健康で暮らせる、と言われる「太巻き丸かぶり」。大阪が起源と言われるこの風習はいつの間にか丹波にも入り込み、我が家の食卓にも節分は巻き寿司が並ぶようになった。恵方は向かないまでも、同じように、3日に巻き寿司を食べた人は、相当数いるだろう。 この風習の起源について調べたところ、発祥の地・大阪では明治時代から一般家庭で行われていたという。ただ、今のように他地域へと波及していったのは20年ほど前からだそうで、「伝統」というにはまだ新しい。食品会社やコンビニの販売戦略にも乗って、関西一円だけでなく九州から関東まで全国に広まりつつあるとか。どうも「全国行事」になりそうな勢いである。 そんな「丸かぶり」の全国進出の第一歩となったのが、大阪の海苔(のり)問屋の組合が節分に開いた「巻き寿司早食い競争」。これがマスコミに取り上げられ、食品会社が飛びついたのだという。何気ないイベントの報道が、結果的に季節の一大行事を作ったことになる。 なんともスケールの大きな話だが、報道に携わる者としては、仕事の重さを改めて知らされた気分で、笑っているわけにもいかない。巻き寿司は好きではないが、自戒としてもう一本口に運ぼうか。(古西広祐)