田村直也選手のオリンピックが終わった。メダルへの期待が高まっていたが、1000メートルは7位入賞、1500メートルは残念な結果となった。3日ほど経った今、田村選手は今大会をどう振り返っているのだろう。 壮行会の後に柏原町のスケートリンクで練習するというので同行させてもらった時のこと。スケートリンクは営業時間が決まっているからムダな時間が過ごせない。服を着替え、スケート靴を履き、時にファンのサインに応じながら、こちらの問いに答えてくれた。 最後にあいさつして帰ろうとすると、「すいません、上手に言えなくて。取材になりましたか」と返してくれた。その忙しくする中での気遣いがうれしかったし、反面、オリンピックに出場するような選手は、他の選手や自分との戦いのほかに、過熱する報道陣、見えないプレッシャーと絶えず戦い、もまれているんだなということが分かった。 スポーツに「たら」「れば」は禁物だが、田村選手にとっては「もし、あの時転倒がなければ」という4年前の続きを見せるのが今回の大会の意味だった。その大会でまたも転倒。物静かで、回りへの気遣いを忘れない好青年でも、勝利の女神は微笑まなかった。今回も「もし…」と考えるのはやめよう。これが、観客には踏み込めない、世界レベルの厳しい勝負の世界なのだろう。(芦田安生)